【教育旅行】「3.11を語り継ぐ旅」2022ツアーレポート(3日目 その1)
10月10日、ツアー最終日の朝が来ました。この日はあいにくの雨。朝のプログラムに入っていた「志津川湾海から学ぶ 乗船体験」が前夜の段階で中止になるほどの荒天でした。そのかわりに「バス語り部」プログラムを用意していただき、メンバーは南三陸町の戸倉地区に向かったのでした。
前夜に泊まった「南三陸まなびの宿 いりやど」で、朝食タイム。キャプテンチームが中心になって、食事の準備が進みます。
バスに乗りこんで出発したとき、「いりやど」スタッフの方々は手を振って見送ってくれました。沿道は、やはり雨。やむ気配はありません。
今日の語り部を務めてくださる、菅原文雄さん。「南三陸さんさん商店街」で合流し、バスに乗り込むと、柔和なトーンでメンバーに語りかけてくれました。
バスは志津川湾海に沿って進み、旧戸倉中学校に向かいます。ここは3.11当日、大津波で浸水した場所です。海を見渡せる場所に立って、菅原さんの語りが始まりました。ここから見る海は低く、遠く目に映ります。「あんなに遠くの海が、まさかここまで来るなんて…」と、驚きを隠せませんでした。
菅原さんは傘を使って、津波到達点を指します。そこには「22.8メートル」の文字が。右の写真の赤いラインまで波が到達し、1階は完全に水没しました。ここに立っていると、やはり「まさかあんな遠くの海が…」と思ってしまうほど、海面は遠く低いのでした。
菅原さんの語りを聴くメンバーの表情にも、驚きと厳粛な思いが交錯します。
その後、菅原さんはメンバーを山側に導き、3.11当日の状況を語ってくれました。メンバーは降りしきる雨の中、静まり返って聴き入ります。
戸倉地区の見学を終えたメンバーは、「さんさん商店街」に戻ってきました。ここで菅原さんからレクチャーを受けます。これから、南三陸町津波復興祈念公園内に保存されている「旧防災庁舎」を見学します。
「中橋」を渡って、防災庁舎へと向かうメンバー。激しさを増す雨の中を、高い橋を渡って、遺構へ近づいていきます。
旧防災庁舎の前には、いくつも花束が捧げられていました。3.11当日、迫りくる大津波から町民を守ろうと、最期まで防災無線に向かい続けた職員の方がいらっしゃいました。この遺構は震災から12年経った今も、その記憶を伝え続けています。
建物内部の骨組みがゆがんで破壊されている様子から、「あの日」の津波の恐るべき力がわかります。メンバーは菅原さんの語りに、庁舎を見上げつつ耳を傾けています。
防災庁舎見学の後は、「祈りの丘」に登りました。頂上には、震災で犠牲になられた町民の方々の名簿が保管されています。
碑の前で手を合わせたあと、目を開くと、メンバーの視界にははるかかなたの海が映っていました。
雨の中、南三陸町見学を終えたメンバー。石巻も、女川も、そしてここ南三陸も、「あの日」大津波に襲われ、多くの方々が犠牲になりました。その事実を映像や数字で「知って」はいても、実際に訪れて自分の目で「見て」、現地の方々の声を「聴く」と、そこでの「空気感」や「ことば」の重みに、ただひたすら驚くしかなかった。訪れてみなければ絶対に感じ得なかった「何か」が、確かにありました。そして、メンバー1人ひとりのなかで、確実に「何か」が変わりつつありました。
さて、長く続いたこのツアーレポートも、次回で最終回です。3日目の午後は、このツアー最後のプログラム「南三陸Yes工房でのワーク」で、みんな楽しく、笑顔でツアーを終えました。その模様を、次回レポートします。