【校長室だより】
学校では、後期中間試験が終わり、本日から4年生が一泊二日で日光への国内研修(奥日光の自然観察と世界遺産見学)に出かけました。また3年生は12月1日(木)から二泊三日で奈良・京都へ研修旅行に行きます。そして前期課程では、12月6日(火)に授業参観とクラス懇談会が実施される予定です。ぜひ多くの保護者の方々のご来校・ご参観をお待ちしています。
さて今回は、著名な犯罪心理学者の出口保行(でぐち・やすゆき)さんが書いた『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』という本から考えたことを書きます。この方は、法務省法務大臣官房秘書課国際室や法務省法務総合研究所研究部長研究官等を歴任し、現在は東京未来大学こども心理学部長の職にある、心理分析のプロフェッショナルです。
私は立場上、学校全体の状況を大きくとらえて判断することが多いのですが、その際気をつけていることは、「木を見て森を見ずになりすぎない」ということです。学校全体を考えすぎて、個々の子どもの状況が見えなくなってしまうことを恐れます。
私がこの本の中で特に気になり、かつ自分でも大いに反省した言葉に「早くしなさい」があります。本当にこの言葉は、日常生活の様々な場面でよく耳にしますね。でも、著者の出口さんによれば、この言葉が頻繁に発せられれば、それはまさに子どもにとっての呪いの言葉になるのだそうです。
根拠はこうです。「早くしなさい」と言われ続けた子どもは、目の前のことをどうするかだけを考えるようになる。その場をしのぐことが最優先事項になるからです。先のことを考え、逆算して事前に物事を準備しておく力、「事前予見能力」を子どもにつけさせるのではなく、です。出口さんによれば、事前予見能力は犯罪を犯す人に最も欠けている能力だそうです。出口さんは、「場当たり的で、後先を考えない刹那的な思考になってしまう」と述べています。
何度も何度も「早くしなさい」と言われた子どもは、つまり、何度も何度も思考停止させられた、ということになります。こう考えるとまさにこれは「呪いの言葉」と言えそうです。呪いの言葉は、その瞬間、本当に簡単に、かつ手っ取り早く子どもを支配できる。であるだけに、「未来の自分が焦ったり失敗したりしないようにするためには、いついつまでに、何をどこまで準備しておけばよいのか」を自分で考えさせる練習、事前予見能力を育てるトレーニングが必要なのだそうです。
保護者のみなさまの多くがお仕事をされていると思いますが、仕事も家事も、ほぼすべての人の営みが
この事前予見能力で成り立っていることを考えれば、これがいかに大切か「予見」できますね。
そして私たち大人は、そのことを念頭に置き、手間のかかる「子育て」や「子どもの教育」に取り組んでいかなければなりません。私たち大人がそうしてもらったように。 (次回12月8日更新予定)