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佐野日本大学中等教育学校

校長室だより

【校長室だより】

 今日は「冬至」です。「冬至」の日には、柚子湯に入ったり、カボチャの煮物や小豆粥を食べて邪気を払い、無病息災を願う昔からの習慣があります。“お日様”の力が回復へ向かう節目の日でもあります。「一陽来復」という言葉もありますね。早いもので、年内の学校も、明日の全校集会をもって終了となり、年明け1月10日(火)の全校集会まで、17日間の冬休みとなります。

 今年も本当に色々なことがありましたが、最大の出来事は何といってもロシアのウクライナ侵攻によって始まった戦争です。戦争を始める時は、必ず大義名分を掲げます。でも、やっていい戦争などはありません。戦争は勝っても負けても双方が深い傷を負うことになります。メディアからの情報しかありませんが、今まで人々が「当たり前」の生活をしていたところが、一瞬にして廃墟になってしまっています。そして何よりも小さな子どもを含め大勢の人の命が犠牲になり、そして悲しみに泣き崩れる人々の姿を見れば、戦争は絶対にやってはいけないことを思い知らされます。私たちは、もっと深く「戦争」について、「平和」について、自分の問題として考えなければいけないと痛感する次第です。

 ところで、ヒトは必要以上に他の生命を奪うために武器や兵器を発明しました。武器や兵器の恐ろしいところは、常に進歩し、留まるところを知らないという点です。新しい武器・兵器を発明すれば、使いたくなりますよね。そう、まるで子供のようにです。しかし現代は、カンタンに武器・兵器を使うわけにはいきません。そうしているうちに、武器や兵器は旧くなり、それがどんどんたまっていきます。使えないモノ、しかも使えば恐ろしい結果を生むモノがどんどんたまってゆく…。しかし新しい武器・兵器の開発をやめることができなくなっている…。

 話は変わりますが、講道館柔道を興した加納治五郎はその理念を「精力善用、自他共栄」としました。「意欲や向上心は善いことのために使おう、そして自分も他者も共に栄えることを目指そう」ということです。また日本の近江商人の経営理念に「三方良し」があります。「売り手に良し、買い手に良し、世間に良し」、つまり誰か一方が得をするのでなく、皆が、そして世の中が良くなることを商売の最も大切な理念に据えたのです。

 武器や兵器の是非の前に、「それを使う人のありかた・考え方」が問われるという、ごく当たり前の、ごく基本的な考えが、現在進行形の、そして終息の見えない争いの推移を見るにつけ、胸に何度も何度も去来するのは私だけではないと思います。

 生徒の皆さんには、もっともっと学びを広げ、そして深めてもらいたい。学ぶことだけが、ヒトに内在する争いへの希求と、誤った向上心の向かわせ方を終わらせる唯一の道であると、2022年の終わりまで10日となったこの日に、私は強く思うのです。

 さて、この文章を書いている部屋のベランダからは、冬の大三角がよく見えます。自然の象徴とも思えるベテルギウス、シリウス、プロキオンは、何千年も変わることなく冬の澄んだ大気を通してその美しい輝きを私たちに見せてくれています。

 自然は、本当に素晴らしい。そしてこの素晴らしい自然が私たちの生命を生み、維持してくれていることに感謝をしつつ、今争いの渦中にいる異国の人々に、争いのないこの国の若者が、思いを致すような高い目線を持ってくれることを願って、2022年最後の校長室だよりといたします。

 皆様にとって、良い年末年始になることを祈っています。 (次回1月10日更新予定)

【校長室だより】

 12月に入り、やっと冬らしくなってきました。校内のイチョウの葉が黄色に色づくのが例年に比べ遅いようにも感じましたが、今ではすっかり落葉しこれからの厳しい冬に備えができたようです。

 さて、本校での大きな行事の一つである3年生の国内研修(12/1~3、奈良・京都)が無事終了しました。そして明日(11月9日)は1年生が東京お台場で行われているエコプロダクツ展にオンラインで参加します。また、12月6日(火)に行われた前期課程(1~3年生)の授業参観・クラス懇談会には、多くの保護者の方々にご来校いただき、誠にありがとうございました。ご家族が来られたということで、生徒たちの表情には、緊張のなかにもどこか晴れやかな雰囲気が見られ、生徒と保護者と学校との一体感が感じられて、とても良い1日になりました。重ねて感謝申し上げます。

 ところで、来年1月14日(土)・15日(日)には、第3回目となる「大学入学共通テスト」が実施されますね。今年の1月13日・14日に行われた第2回大学入学共通テストでは、多くの教科で前年度の平均点を大きく下回り、「センター試験を含めて過去で最も難しい試験となった」という分析がほとんどでした。

 例えば国語では、現代文の評論問題と古文の問題で、それぞれ問題文が二つ出されました。受験生は、1つ目の問題文を読み、要点を捉え、次に2つ目の文章を、1つ目の問題文との共通点や相違点を捉えながら、同様に要点をつかむ。そしてそれらをすべて念頭に置いて設問を解くという、実に複雑な頭の使い方が必要でした。

 国語だけでなく、その他の教科でも、身に付けた知識のうえに、高度な論理的読解力・分析力・思考力が問われる入試になり、前述のような結果となったわけです。

 さて、第3回目はどんな問題が出題されるでしょうか。2日間とも、それぞれ翌日の新聞に前日の教科の問題がすべて掲載されますので、生徒のみなさん、そして保護者の方々にもご覧いただきたいと思います。そしてできれば、それを親子の、前向きな会話の素材にしてほしいと思います。

 また、2025年1月から刷新、実施される予定の大学入学共通テストの試作問題が、大学入試センターより公開されましたね。新学習指導要領に対応した内容で、これまた注目に値する変化がたくさんあります。機会をつくり、ぜひこの試作問題を、自分の目で見ていただきたいと思います。2025年1月から実施ということは、本校では現在の4年生以下の学年が該当します。一言で論理的読解力・思考力・表現力と言いますが、当然ながら一朝一夕に身につくものではありません。心して準備していく必要があると思います。

 学校の教科学習で行われる内容には、当然ながらそのほとんどに「正解」が用意されています。生徒たちは、教師から学ぶ「正解に至るための合理的なスキル」を身に付けていくわけです。しかし、実際に世の中にあること、たとえば仕事にしても子育てにしても、あるいは環境問題や外交問題などのあらゆる要素が入り込んでくる、それこそ複雑怪奇な課題には、いわゆる「正解」はありません。色で例えるなら、真っ白から真っ黒まで、無限のグラデーションがあります。子どもたちは、今取り組んでいる「正解のある学び」を通して、これから取り組まなければならない「正解のない問題」への対処の仕方を身に付けなければなりません。

 大学入学共通テストが、複雑な頭の使い方を要求してくるのは、ある意味必然かもしれませんね。 また、見方を変えれば、「正解のある問題」すらできないようであれば、「正解のない問題」には対処できない、と言えるかもしれません。 (次回12月22日更新予定)

【校長室だより】

 学校では、後期中間試験が終わり、本日から4年生が一泊二日で日光への国内研修(奥日光の自然観察と世界遺産見学)に出かけました。また3年生は12月1日(木)から二泊三日で奈良・京都へ研修旅行に行きます。そして前期課程では、12月6日(火)に授業参観とクラス懇談会が実施される予定です。ぜひ多くの保護者の方々のご来校・ご参観をお待ちしています。

 さて今回は、著名な犯罪心理学者の出口保行(でぐち・やすゆき)さんが書いた『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』という本から考えたことを書きます。この方は、法務省法務大臣官房秘書課国際室や法務省法務総合研究所研究部長研究官等を歴任し、現在は東京未来大学こども心理学部長の職にある、心理分析のプロフェッショナルです。

 私は立場上、学校全体の状況を大きくとらえて判断することが多いのですが、その際気をつけていることは、「木を見て森を見ずになりすぎない」ということです。学校全体を考えすぎて、個々の子どもの状況が見えなくなってしまうことを恐れます。

 私がこの本の中で特に気になり、かつ自分でも大いに反省した言葉に「早くしなさい」があります。本当にこの言葉は、日常生活の様々な場面でよく耳にしますね。でも、著者の出口さんによれば、この言葉が頻繁に発せられれば、それはまさに子どもにとっての呪いの言葉になるのだそうです。

 根拠はこうです。「早くしなさい」と言われ続けた子どもは、目の前のことをどうするかだけを考えるようになる。その場をしのぐことが最優先事項になるからです。先のことを考え、逆算して事前に物事を準備しておく力、「事前予見能力」を子どもにつけさせるのではなく、です。出口さんによれば、事前予見能力は犯罪を犯す人に最も欠けている能力だそうです。出口さんは、「場当たり的で、後先を考えない刹那的な思考になってしまう」と述べています。

 何度も何度も「早くしなさい」と言われた子どもは、つまり、何度も何度も思考停止させられた、ということになります。こう考えるとまさにこれは「呪いの言葉」と言えそうです。呪いの言葉は、その瞬間、本当に簡単に、かつ手っ取り早く子どもを支配できる。であるだけに、「未来の自分が焦ったり失敗したりしないようにするためには、いついつまでに、何をどこまで準備しておけばよいのか」を自分で考えさせる練習、事前予見能力を育てるトレーニングが必要なのだそうです。

 保護者のみなさまの多くがお仕事をされていると思いますが、仕事も家事も、ほぼすべての人の営みが

この事前予見能力で成り立っていることを考えれば、これがいかに大切か「予見」できますね。

 そして私たち大人は、そのことを念頭に置き、手間のかかる「子育て」や「子どもの教育」に取り組んでいかなければなりません。私たち大人がそうしてもらったように。 (次回12月8日更新予定)